【書評】村上春樹らしさがギュッと凝縮!「騎士団長殺し」

 

Hola!伊藤輝(Akira Ito)です。

【書評】です!!

年間100冊以上本を読む伊藤輝(Akira Ito)がとても面白かった本をただただ紹介するコーナーです。

 

今回紹介するのはコチラ!

出ました村上春樹。僕は最初に読破した長編小説が村上春樹の「世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド」で、そこからはハルキスト(村上春樹ファンの通称)としてたくさんの作品を読んでいきました。今作は、僕が海外を旅している間にリリースされたもので、帰国してすぐに購入。ゆっくり時間をかけて楽しませていただきました。

女優の芦田愛菜ちゃんも自身の著書「まなの本棚」でこの作品を、そして村上春樹が好きだと公言していました。

 

 

ざっくり「騎士団長殺し」

 

妻と別居していた9ヶ月間に起こる不思議な出来事

物語の大部分は画家の主人公(名前は出ません)が妻に離婚を言い渡され、別居し再びよりを戻す、9ヶ月の間の不思議な体験と出会いの話です。妻と暮らしていた部屋を出て行ったあくる日、大学時代の友人に、祖父の別荘に住んでみないかと提案されます。有名な画家であった彼の祖父は、現在は認知症施設に入所しており、別荘は買い手が見つかるまで放置されてしまっているとのことで、主人公はその別荘にしばらく住んでみることに。

別荘で、深夜のとある時間に聴こえてくる謎の鈴の音。別荘の屋根裏で見つかる奇妙な「騎士団長殺し」という題の日本画。家の裏手にある謎の祠。この関係性は・・?

 

少女の失踪、個性的な登場人物。固定概念を覆すファンタジー展開。個人的に好きなパターンです。

 

「騎士団長殺し」印象的な部分をピックアップ

 

村上春樹のお約束。「独特なメタファー」

 

村上春樹作品で僕が好きなお約束的な表現がいくつかあります。その一つが「独特なメタファー」。他の著者にはない彼の奇想天外なメタファーはいつも僕の心を鷲掴みにします。

秋川まりえの叔母は随分穏やかな話し方をする、顔立ちの良い女性だった。はっと人目を惹くような美人ではないが、綺麗に整った上品な顔立ちだった。自然な笑みが明け方の白い月の様に 、口元に控えめに浮かんでいた。

「ねぇ、わたしの胸って小さいでしょう」とまりえは言った。「そうかな」と私は言った。「膨らみそこねたパンみたい に小さいの」

なんでしょう、この不思議な表現。。小さい胸を「膨らみそこねたパン」に例えるあたり。別の場面では主人公が秋川まりえの小さい胸を「失敗したパンケーキ 」と例えています。このように、人物によって同じ対象を絶妙に違う例えで表現するところが彼の一つの魅力だと思っています。

 

「イデア」という謎の存在

白装束の年老いた男が若い男に胸を刺され、血を吹き出して今まさに絶命しようとしているところを描いた「騎士団長殺し」と記された日本画。その騎士団長があるタイミングで絵に描かれたサイズ(身長60センチ程度)のまま主人公の前に「イデア」として現実に登場します。

イデアは色々な制限を受けて存在していて、このイデアの動向が物語とかなり深く関わっていて、描写一つ一つが読んでいて全く飽きさせません。相手の心の動きを読めたり、みえる人と見えない人がいたり、未来が見えたり。。かと思えば、「殺せ」と言ってきたり。

 

村上春樹の頭の中、どうなっているんでしょうね。

 

凄みのある官能的な描写

今回の騎士団長殺しはところどころで官能的小説として成立するんじゃないかと思わせるほどリアルなセックスの描写があります。やはり惹きつけるものがありますね。。浮気、不倫、テレフォンセックスまで事細かに描写されていて、読む人によっては刺激が強過ぎるかもしれませんが、物語の伏線になっていたりするものもあって、不思議と嫌悪感はありません。前述のイデアが主人公のセックスを見物するシーンもあって、イデアの存在が光ります。笑

この作品の見所の一つであることは間違い無いでしょう。

 

まとめ

今回の作品は南京事件に関する描写が一時話題になりましたね。2部合わせて1000ページを超える長編作で、読み終えて余韻として残る読了感はなんとも言えません。最後まで楽しく読むことができました。

 

村上春樹の作品を全て読んだ訳ではありませんが、誰かが失踪したり、別世界が存在したり、音楽が凝っていたり、村上春樹らしいお約束な表現が盛り込まれています。読むときは書き下ろしのハードカバー版で読むことが多いです。笑う表現一つ、”カギカッコ”一つ、”句読点”一つ、彼の書いた一文字一文字が、何かとても貴重なものというか、伏線のような意図のあるものに感じていつも一字一句丁寧に読み進めてしまいます。そんな不思議な魅力がある村上春樹の文章。読んだことがない方はぜひ一度読んでみてください!!

 

伊藤輝(Akira Ito)